福祉葬とは?費用目安や利用条件を解説します

経済的な事情により葬儀費用の支払いが困難な場合に、自治体から「葬祭扶助」を受けて行われるのが「福祉葬」です。しかし、「どのような条件を満たせば利用できるのか」「自己負担は本当にゼロなのか」など、制度の詳細が分からず不安を感じる方も少なくありません。 本記事では福祉葬について以下の点を中心に紹介します。
  1. •福祉葬とは
  2. •福祉葬の利用条件
  3. •福祉葬を行う際の注意点
福祉葬について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。  

福祉葬とは?制度の概要と目的

福祉葬とはどのような制度なのでしょうか。以下で解説します。

 

●福祉葬の基礎知識

福祉葬は、生活保護を受けている方が亡くなった場合に行われる、経済的な負担を軽減するための葬儀です。葬祭扶助を利用し、葬儀費用は基本的に自治体から支給されるため、故人や遺族に直接費用負担はありません。

福祉葬の特徴として、通夜や告別式は行われず、棺に納めて火葬する、儀式を伴わない形態が取られます。通夜や告別式を省いた形になるため、葬儀内容は必要最低限になります。

また、葬儀を行う場所が生活保護受給者の居住地でないと、葬祭扶助は適用されません。

 

●葬祭扶助で支給対象となる費用

葬祭扶助は、生活保護受給者の葬儀費用を自治体が支援する制度です。支給される費用は、葬儀を簡素に行うために必要最低限の範囲に限られます。具体的には以下のような費用が支給対象です。

【支給対象の費用】
  1. ・遺体搬送費用:病院や自宅から火葬場への運搬費用が含まれます。
  2. ・火葬料金:火葬にかかる費用が支給されます。
  3. ・棺や骨壺:棺や骨壺、骨箱の費用も支給対象です。
  4. ・ドライアイス:遺体の安置に必要なドライアイスの費用です。
  5. ・寝台車や霊柩車:遺体を搬送するための車両費用が支給されます。
  6. ・納骨に関する費用:骨壷や骨箱など、納骨に必要な費用が含まれます。
  7. ・安置施設使用料:遺体を安置する施設の使用料も支給対象となります。
 

●扶助対象外となる費用

葬祭扶助は、必要最低限の葬儀費用が支給されますが、以下の費用は扶助対象外です。


【扶助対象外の費用】
  1. ・通夜振る舞いや精進落とし:通夜後や告別式後の会食費用は扶助対象外です。
  2. ・香典返しや返礼品:香典に対するお礼としての返礼品や香典返しは支給されません。
  3. ・読経料や戒名料:僧侶による読経や戒名授与にかかる費用も対象外です(一部例外あり)。
  4. ・生花や供物:葬儀において使用する生花や供物は、最低限のもの以外は扶助対象になりません。
  5. ・寝台車や霊柩車:遺体を搬送するための車両費用が支給されます。
  6. ・遺影写真の作成費用:故人の遺影写真の作成費用は自己負担となります。
  7. ・特別な祭壇の設置費用:通常の葬儀では使用しない特別な祭壇設置の費用も支給されません。
また、納骨にかかる費用や墓地の使用料も扶助対象には含まれません。上記を希望する場合は、別途自己負担での手配が必要です。扶助を利用する場合は事前に葬儀社と相談し、予算を確認しておくことが重要です。  

福祉葬を利用できる条件と申請要件

福祉葬は、経済的負担を抑えながら故人を見送ることのできる制度ですが、利用にあたっては以下のような条件があります。

 

●対象者の条件

福祉葬を利用するためには、葬儀の前に葬祭扶助の申請手続きを行い、審査を通過する必要があります。この申請を通過すると、生活保護受給者やその遺族が経済的負担を軽減できる葬儀を執り行えます。福祉葬の対象者は、以下の条件を満たしていることが求められます。

①喪主が生活保護受給者

喪主が生活保護を受けている場合、葬祭扶助を受けることができます。

②故人様が生活保護受給者かつ身寄りがいない

故人が生活保護を受けていて、身寄りがなく葬儀費用が捻出できない場合も、扶助が適用されます。

申請は葬儀前に行い、手続きは葬儀社が代行することもできます。申請が通過すれば、自己負担ゼロ円で葬儀を行えるため、福祉葬を希望する場合は事前に葬儀社に相談し、必要な手続きを進めましょう。

また、条件に合致する場合、故人や遺族だけでなく、一定条件を満たした第三者も扶助を受けることができます。

 

●福祉葬が認められないケース

福祉葬は、生活保護受給者やその家族が経済的に葬儀を行えない場合に適用される制度ですが、いくつかの条件が整わない場合には利用できません。以下は、福祉葬が認められない主なケースです。


①故人に資産がある場合

故人が生活保護を受けていても、預貯金や不動産などの資産がある場合、その資産で葬儀費用を賄うことができると判断されるため、福祉葬は認められません。


②葬儀費用を支払える親族がいる場合

喪主や故人の親族に葬儀費用を支払えるだけの経済力がある場合、福祉葬は認められません。親族が葬儀費用を負担することが期待されます。

③通夜や告別式を行う場合

福祉葬は直葬(火葬式)のみが対象であり、通夜や告別式を行う場合、経済的に余裕があると見なされ、葬祭扶助の資格を取り消される可能性があります。

上記のような場合、葬儀費用の支払いは自己負担となり、福祉葬を利用することができません。必要に応じて葬儀社と相談し、適切な手続きを進めることが推奨されます。

 

●葬祭扶助の申請は葬儀前に行う

福祉葬を利用するための葬祭扶助は、必ず葬儀(火葬)を行う前に申請する必要があります。すでに葬儀を終えた後の申請は、原則として認められていないため注意が必要です。不幸があった際は、できるだけ早く市区町村の福祉・保護課へ連絡し、申請手続きを進めましょう。

ただし、夜間や休日に亡くなられた場合は、直後に連絡が取れないからといって問題になるわけではありません。最初の開庁日に速やかに申請を行えば差し支えないとされています。

また、葬儀社へは事前に「福祉葬(民生葬)を希望している」旨を伝え、申請が承認されるまで葬儀の実施を待ってもらう必要があります。

なお、葬祭扶助が支給されるかどうかは、最終的に担当ケースワーカーの判断によって決定されます。早めの相談と事前申請が、円滑な手続きにつながります。

 

福祉葬の主な流れ

ここでは、福祉葬の主な流れについてご紹介します。

 

1. 自治体または葬儀社に連絡する

福祉葬を希望する場合、まずは自治体または関係機関へ連絡しましょう。具体的には、次のいずれかに相談します。

・市区町村の福祉課・福祉事務所 ・担当のケースワーカー ・地域の民生委員

自治体へ連絡すると、葬祭扶助の申請方法や今後の流れについて案内が受けられます。ただし故人が生活保護を受給している場合、原則として最寄りの市区町村で手続きを行う必要があるため、連絡先には注意が必要です。

喪主と故人の住所地が異なる場合は、申請者(喪主)が住んでいる自治体で申請します。その際、念のため故人の住所地の自治体にも連絡しておくと手続きが円滑です。申請時には、死亡診断書など死亡を証明できる書類や、申請書類への個人情報や経済状況の記入が求められます。

このほか、葬儀社に連絡して福祉葬を希望する旨を伝えれば、葬祭扶助の申請や流れの説明が受けられる場合もあります。原則は葬儀前申請ですが、事前相談がある場合は自治体の判断で対応が示されることもあるため、早めの相談が重要です。

 

2. ご遺体の搬送と安置

福祉葬において、亡くなられた場所から安置場所までの搬送を行うのは葬儀社です。すでに依頼する葬儀社が決まっている場合は、自治体への連絡と併せて、福祉葬を希望している旨を必ず伝えておきましょう。

また、葬儀社が未定の場合でも、自治体に相談すれば対応可能な葬儀社を紹介、または連絡してもらえる可能性があります。そのため、まずは福祉課などへ連絡することが大切です。自治体経由で手配された場合、葬祭扶助の申請や葬儀内容の調整は、自治体と葬儀社の間で進められることが一般的です。

搬送後の安置場所は、葬儀社の安置施設(霊安室)やご自宅が選択されます。場所によっては、付き添いが可能な霊安室を案内してもらえることもあります。葬儀社は、病院や自宅から安置場所へ搬送し、納棺までを担当します。

 

3. 葬儀内容の打ち合わせ

ご遺体の搬送と納棺が終わると、葬儀社と葬儀内容について打ち合わせを行います。打ち合わせでは、福祉葬の内容を確認し、日程などを決めていきます。故人に身寄りがない場合は、自治体の担当者と葬儀社が直接打ち合わせを行うケースもあります。

主に決める内容は、次の2点です。

①出棺する日時 ②出棺する場所(自宅または指定の安置場所など)

福祉葬は、搬送・納棺・火葬を基本とした簡素な葬儀であるため、通夜や告別式のように細かな準備や選択が多くありません。そのため、打ち合わせは短時間で終わる傾向があります。

ただし、自治体によっては花束を含めるなど、福祉葬に含まれる内容が異なる場合があります。この打ち合わせのタイミングで、葬祭扶助の申請手続きを進めることもあります。

いずれにおいても、ご自宅や希望の場所で日程を調整しながら、自治体の指示に従って進めていきましょう。

 

4. 葬儀や火葬の実施

福祉葬は、通夜や告別式を行わず、火葬のみで故人を見送る火葬式(直葬)が基本です。当日は葬儀社スタッフが故人のもとへ伺い、棺に納めたうえで火葬場まで搬送します。

出棺後は火葬が行われ、火葬終了後に収骨し、遺骨は骨壺に納められます。骨壺は四十九日法要まで自宅で安置するのが一般的で、すべての工程が終了すると埋葬許可証が渡されます。

福祉葬における服装のマナー

福祉葬での服装は、一般的な葬儀と同様のマナーを守ることが基本です。準喪服の着用が望ましいものの、福祉葬は少人数で行われることが多いため、紺やグレーなどの落ち着いた服装であれば問題にならないケースもあります。いずれの場合も、華美にならず、地味で落ち着いた装いを心がけることが大切です。


【男性の服装】
  1. ・ブラックスーツ、または紺やグレーのダークスーツ
  2. ・白いシャツに黒の無地ネクタイ(光沢のないもの)
  3. ・アクセサリーは結婚指輪のみ
  4. ・靴、靴下は黒でシンプルなデザイン

【女性の服装】
  1. ・黒のスーツやワンピース、または紺やグレーのフォーマル服
  2. ・アクセサリーは着けない、または真珠など控えめなもの
  3. ・飾りのない黒のパンプスなど

【子どもの服装】
  1. ・制服がある場合は制服を着用
  2. ・制服がない場合は黒、紺、グレーを基調とした服装
  3. ・白いシャツなど、装飾の少ないシンプルな服装を選ぶ

福祉葬は形式よりも故人を静かに見送ることを大切にする葬儀です。服装に迷った場合は、控えめで落ち着いているかを基準に選ぶと安心です。

 

福祉葬の費用目安

福祉葬は、生活保護制度に含まれる「葬祭扶助」を利用して行う葬儀で、葬儀費用を捻出できない場合に自治体から必要最低限の費用が支給される仕組みです。生活保護葬、民生葬とも呼ばれ、検案、遺体の搬送、火葬、収骨など、葬儀に欠かせない基本的な工程が支給対象です。

葬祭扶助の支給額は自治体ごとに異なりますが、大人の場合は20万6,000円以内、12歳未満の子どもは16万4,800円以内が目安とされています。この範囲内で葬儀が行われるため、原則として葬儀費用の自己負担は発生しません。

一方で、すべての費用が補助されるわけではなく、一部は自己負担となる実費があります。具体的には、死亡診断書の発行料、埋葬許可証の手数料、遺族の交通費、骨壺の購入費用、葬儀後の会食費などが該当します。

自治体や葬儀社によって支給内容が異なるため、事前確認を心がけましょう。  

福祉葬についてよくある質問

ここでは、福祉葬についてよくある質問をご紹介します。  

●福祉葬で通夜や告別式はできますか?

葬祭扶助は「最低限の葬儀を保障するための制度」であるため、オプションを追加し、支給額を超えた差額を自己負担することは認められていません。制度の範囲を超える内容を希望する場合は、葬祭扶助を利用せずに別の葬儀形式を選ぶ必要があります。

葬儀社によっては、福祉葬に加えて独自の配慮が用意されている場合もあります。例えば、火葬後の納骨までを含めた永代供養をセットにしているケースなどが挙げられます。

また、福祉葬以上の内容を希望する場合には、費用を抑えた1日葬など別の選択肢を検討することも一つの方法です。いずれにおいても、制度の趣旨を理解したうえで、状況に合った形を選ぶことが大切です。

 

●福祉葬では香典を受け取っても大丈夫ですか?

福祉葬(生活保護葬)を行う場合、「葬祭扶助を受けているのだから香典は受け取れないのでは」と不安に思う方も少なくありません。しかし、福祉葬でも香典は問題なく受け取ることができます。

香典は遺族の自由に使えるもので、収入とはみなされないため、自治体への申告や返還の必要もありません。原則として非課税扱いとなり、所得税がかかることもありません。

ただし、香典の金額が非常に高額な場合には注意が必要です。葬儀費用を大きく上回るような金額になると、一部が収入と判断される可能性があり、その基準は自治体ごとに異なります。万一多額の香典を受け取った場合は、念のため自治体に確認しておきましょう。

また、香典を受け取った場合、通常は香典返しを行いますが、香典返しの費用は葬祭扶助の対象外となります。費用負担が難しい場合は、あらかじめ香典辞退を伝えておく方法もあります。福祉葬は参列者が限られることが多いため、香典辞退を選ぶことで、後の負担軽減にもつながります。

 

福祉葬のまとめ

ここまで福祉葬についてお伝えしてきました。本記事の要点をまとめると以下のとおりです。
  1. •福祉葬とは、生活保護制度の一つである葬祭扶助を利用して行う葬儀である。経済的な理由で葬儀費用を負担できない場合に、自治体から必要最低限の費用が支給され、通夜や告別式を行わず、火葬のみで見送る直葬が基本である
  2. •福祉葬は、喪主が生活保護受給者である場合や、故人が生活保護受給者で身寄りがない場合に利用できる。葬祭扶助の申請は葬儀前に行い、自治体の審査を通過する必要があり、条件を満たさない場合は利用できないこともある
  3. •葬祭扶助は最低限の葬儀のみが対象で、通夜や告別式やオプション追加は原則認められない。香典は受け取れるが、香典返しは自己負担となるほか、申請は必ず葬儀前に行い、事前に自治体や葬儀社へ相談することが重要
福祉葬は、経済的な事情があっても故人をきちんと見送るために設けられた制度です。内容や条件を正しく理解しておくことで、いざという時も落ち着いて対応できます。事前に自治体や葬儀社へ相談し、後悔のない選択をしましょう。 これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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