お布施は、読経や供養への感謝の気持ちを形にしたもので、葬儀や法要では欠かせない存在です。しかし、「いくら包めばいいの?」「どのような封筒を使うの?」など、いざ準備しようとすると迷う方も多いのではないでしょうか。
本記事ではお布施について以下の点を中心にご紹介します。
- •お布施とは
- •お布施の相場
- •お布施を渡すタイミング
お布施について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
お布施とは?
お布施は、僧侶が読経をしたり戒名を授与したりした際に、そのご縁への感謝としてお渡しする謝礼のことです。葬儀や法要で僧侶をお招きする場合、遺族が準備しておくべき大切な習慣のひとつです。
ただし、お布施は「報酬」ではなく、あくまで感謝の心を形にしたものです。金額に明確な決まりはなく、気持ちを込めてお渡しするという位置づけになります。なお、仏教ではお布施を「包む」「納める」と表現するのが一般的です。
もともと「布施(ふせ)」という言葉は、仏教で説かれる実践のひとつで、自分の持ち物を無条件で人に差し出す行為を指します。起源には、貧しい人が僧侶に布を差し出して感謝を示したというインドの説話もあり、お布施には「見返りを求めない気持ち」が根本にあります。
なお、神式の葬儀では「お布施」という言葉は使わず、同様の意味をもつ謝礼として「祭祀料(さいしりょう)」をお渡しします。宗教形式によって呼び名が異なる点は知っておくと安心です。
香典との違い
お布施と香典は、どちらも仏事に関わる金銭ですが、その意味や渡す相手、マナーには明確な違いがあります。混同しがちですが、それぞれの目的を正しく理解することが大切です。
前述のとおり、お布施は、葬儀や法要などの仏事において読経を読んでくれる僧侶への感謝や供養の気持ちを表すために渡すものです。一方、香典は故人への弔意と、その遺族に対するお悔やみの気持ちを込めて渡します。つまり、お布施は宗教的な意味合いが強く、香典は人間関係に基づく弔意の表現といえます。
また、お布施の渡し先は僧侶や寺院ですが、香典は葬儀を主催している遺族へ手渡します。この点でも、お布施と香典ははっきりと区別されます。
さらに、お布施は「仏事での贈り物」として、慶事に近い形式で包むのが一般的です。香典とは異なり、不祝儀袋ではなく白無地の封筒や奉書紙で包むのが通例です。反対に、香典は「哀悼の意」を示すものとして、弔事のマナーに従って黒白の水引がついた香典袋に包みます。
お布施の相場
法事や法要でお渡しするお布施は、一般的に3万円〜5万円程度がひとつの目安とされています。ただし、法要の種類や規模によって適した金額は変わることがあり、事前に相談しておくと安心です。
例えば、一周忌までの法要は3万円〜5万円ほどが相場とされますが、三回忌以降は負担がやや軽くなり1万円〜5万円ほどになることが多いとされています。命日からの年数に応じて金額が緩やかに下がっていくことが一般的です。
また、納骨の際にも僧侶にお布施をお渡しします。納骨のみの場合は1万円〜5万円ほどが多く、開眼供養(お墓の魂入れ)を同時に行う場合は、それぞれのお布施を合わせてお渡しすることもあります。寺院や墓地の運営方針によって異なるため、事前の相談がおすすめです。
なお、葬儀や結婚式などでは縁起に配慮して避ける数字がありますが、お布施には禁忌とされる金額や枚数はありません。 4や9といった数字でも問題なく、偶数でもマナー違反にはあたりません。細かな数値にこだわる必要はなく、キリのいい金額に調整してお渡しすれば失礼にあたることはありません。
お布施で支払う料金の内訳
お布施という言葉には、一見するとひとまとまりの金銭を指しているような印象がありますが、実際には複数の要素が含まれています。ここでは、葬儀や法要の際に必要となる代表的な費用の内訳について紹介します。
●戒名に関する費用(戒名料)
戒名(かいみょう)は、故人が仏門に入る際に授けられる名前であり、それに対する謝礼として渡すのが「戒名料」です。
戒名料は、戒名の格式や文字数、宗派の慣習によって大きく異なります。一般的には10万円前後から、場合によっては100万円を超えることもあります。あらかじめ菩提寺や担当の僧侶に相談して、適切な金額を相談しましょう。
●読経に対する謝礼(読経料)
読経料は、僧侶にお経をあげてもらう際の謝礼としてお渡しするものです。1回の読経につきおおよそ3万円〜5万円が相場とされています。
例えば、通夜、葬儀、火葬の3回にわたって読経を依頼する場合、それぞれに応じた金額を包む必要があります。宗派によっては読経をしないケースもあるため、事前の相談が重要です。
●お布施以外で必要になる費用
お布施とは別に、僧侶の移動や食事に関する費用も発生することがあります。これらは通常、別の封筒に分けて用意し、それぞれの名目で渡すのが一般的です。以下で詳しく解説します。
•御車料
御車料(おくるまりょう)は、僧侶が会場まで移動する際の交通費として渡すもので、相場は5,000円〜1万円程度です。遠方からの移動で飛行機や新幹線を利用する場合は、その分を加味して金額を調整します。
•御膳料
御膳料(ごぜんりょう)は、法要後の会食に僧侶が参加しない場合、代わりに食事代としてお渡しするものです。目安としては5,000円から2万円程度です。会食に参加する場合には、この費用は不要となります。
お布施で準備するもの
お布施をお渡しする際には、いくつか必要なアイテムがあります。事前に揃えておくことで、当日の所作もより丁寧に行えます。以下で詳しく解説します。
●お布施として包むお金
お布施として包むお金を準備します。弔事では旧札を使うのが一般的ですが、お布施は感謝の気持ちを表す性質があるため、新札でも差し支えありません。ただし、汚れや折れが目立つ紙幣は避けるのがマナーです。
●紙幣を包むための 奉書紙または封筒
紙幣を包むための奉書紙または封筒を用意します。どちらにするかは地域や寺院の習慣によって異なるため、迷った場合は事前に確認すると安心です。記載に使う筆記具は濃い墨色の筆や筆ペンがおすすめです。ボールペンやサインペンは略式とされるため避けましょう。
●袱紗または切手盆
お布施をそのまま手渡しするのは控えるべきとされているため、袱紗(ふくさ)または切手盆のどちらかを用意します。袱紗は金封を包む小さな布で、切手盆は金品をのせる小さなお盆のようなものです。どちらを使用しても問題ありません。
お布施の書き方
お布施を包む際には、封筒の選び方から文字の書き方まで、いくつかの基本マナーがあります。正しい形式で記入することで、僧侶への敬意や感謝の気持ちがより丁寧に伝わります。ここでは、表面・裏面の書き方、筆記具の選び方などを詳しく解説します。
●使用する筆記具のルール
お布施の記入には黒の濃い墨色を使うのが正式です。香典袋のように薄墨を用いるのは「不幸が予期せぬ出来事であった」という意味があるため、お布施には適しません。
毛筆・筆ペン(濃墨)で記入し、ボールペンや万年筆、サインペンは避けましょう。丁寧に記入することそのものが、僧侶への礼を尽くす姿勢につながります。
●表書きの書き方(封筒の表面)
封筒の正面(中央上)には、下記のいずれかを記載します。
- •御布施
- •お布施
その下には、
- •喪主または施主のフルネーム
- •もしくは 「〇〇家」
を書きます。「家」で記載した場合は、裏面に詳細を記しておくと丁寧です。
●裏書きの書き方(封筒の裏面)
封筒の裏側には、必要に応じて以下の項目を記入します。
- •喪主・施主の住所
- •氏名(フルネーム)
- •包んだ金額
住所と氏名は左下に縦書きで記入します。金額を書く場合は、住所の下に続けて書くか、右下に縦書きで配置しても問題ありません。
●金額を記載する際は以下の点に注意しましょう。
- •数字は大字(旧字体)で書く(例:壱・弐・参・萬・圓)
- •基本の形式は「金壱萬圓也」 のように書く
- •葬儀の香典とは異なり、4や9などの数字を避ける必要はない
金額・住所は必須ではありませんが、寺院での管理がしやすくなるため、記載しておくと親切です。
●書く際のポイント
書く際のポイントは以下のとおりです。
- •表書きと裏書きは濃墨で書く
- •丁寧で読みやすい文字を意識する
- •汚れたり折れたお札は避け、なるべくきれいな紙幣を用意する
- •袱紗や切手盆に載せて渡す(手渡しは避ける)
これらを守ることで、僧侶へ敬意を払った丁寧なお布施となります。
お布施の包み方
お布施は僧侶への感謝をあらわすものだからこそ、丁寧に包むことが大切です。まずお札は、封筒を開けた際に肖像画が正面に見える向きで入れます。葬儀の香典では肖像画を伏せるのが一般的ですが、お布施はお礼としてお渡しする性質のものなので、新札を正しい向きで包むのがおすすめです。汚れたお札や古いお札は避け、可能な限りきれいな紙幣を用意しましょう。
包む際の外袋には、水引のない白封筒を使うのが一般的です。お札の透ける薄い封筒や、弔事を連想させる二重封筒は不向きです。より正式にしたい場合は、奉書紙を用いた包み方もあります。奉書紙を菱形に広げ、中袋をやや左寄りに置いたうえで、紙の端を左→右→下→上の順に畳んでいきます。最後は折り目が上側にくるよう仕上げるのが作法です。
僧侶へお渡しする場面では、封筒をそのまま手渡しするのは控え、切手盆または袱紗(ふくさ)を使います。切手盆の場合は、まず自分側を正面にして置き、それから相手側が正面になるよう静かに向きを変えて差し出します。寺院に伺う際は、袱紗に包んだ状態でお出しするとより丁寧な印象になります。
お布施を渡すタイミングは?
お布施を渡すのによいタイミングは、葬儀や法要が始まる前です。僧侶と最初に挨拶を交わす場面でお布施を差し出すと、自然な流れでお渡しできます。
特に、法要後にすぐ次の予定がある僧侶も多いため、開始前に済ませておくと落ち着いて対応できるでしょう。僧侶が複数いる場合は、基本的に位の高い方へまとめてお渡しします。
一方で、式典前に十分な時間が取れない場合は、終了後にお渡ししても問題ありません。葬儀であれば「本日はお勤めいただきありがとうございました」、法要であれば「本日はお世話になりました」など、感謝の言葉を添えてお渡しすると丁寧です。
当日の対応が難しいときは、後日あらためて寺院を訪ねてお布施をお持ちできます。その際は、当日に渡せなかった旨をお詫びし、気持ちを込めてお渡ししましょう。
お布施についてのまとめ
ここまでお布施についてお伝えしてきました。お布施についての要点をまとめると以下のとおりです。
- •お布施は、僧侶が読経をしたり戒名を授与したりした際に、そのご縁への感謝としてお渡しする謝礼のこと
- •お布施の相場は、法事や法要でお渡しする場合、一般的に3万円〜5万円程度がひとつの目安となっている
- •お布施は葬儀や法要が始まる前に渡すのがよい
お布施は、僧侶のお勤めに対して感謝の気持ちを表す大切なお礼です。相場や封筒の書き方、渡し方にはいくつかのマナーがありますが、一つひとつ押さえておけば、失礼のない形で気持ちを伝えられます。
特に、包み方やタイミングなどは地域や寺院によって細かな違いがあるため、迷ったときは事前に相談しておくと安心です。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。



