木や花を墓標とする樹木葬(じゅもくそう)は、自然と寄り添いながら故人を想う供養のかたちです。複数の種類があり、埋葬の方法もいくつかの選択肢が用意されています。
本記事では樹木葬について以下の点を中心に紹介します。
- •樹木葬とは?
- •樹木葬の4つの種類について
- •樹木葬の埋葬方法の違い
樹木葬について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。
樹木葬とは
樹木葬とは、墓石を建立する代わりに、樹木や草花を墓標として遺骨を埋葬する新しい供養形式です。自然の中で眠りたいという想いに応える方法として広がっており、従来のお墓とは異なる“自然と共にある供養”を実現できる点が特徴です。
埋葬は、認可を受けた墓地や霊園内に行われ、桜やハナミズキ、モミジ、クスノキといった象徴的な樹木の足元へ納めるタイプのほか、芝生や草花で整えた場所やバラをシンボルにした場所などがあります。
また、後継者を必要としない永代供養として扱われることも多いとされ、費用面でもお墓より抑えられるケースが少なくないため、近年のライフスタイルや価値観に合った埋葬方法として選択されています。
樹木葬の種類
樹木葬は、都市型や里山型、公園型、庭園型などの種類があります。それぞれについて、詳しく解説します。
●都市型
都市型の樹木葬は、限られた敷地でも実施できるよう工夫されたスタイルで、都市部の霊園や寺院に専用区画として整備されています。
個別に樹木を植えるケースもありますが、既存のシンボルツリーの周囲に遺骨を納める形が基本で、自然の雰囲気を大切にしながらも効率的に区画を活用できる設計です。
都会の中心部や交通アクセスのよい場所に設けられており、定期的にお参りしやすいこともメリットです。
また、管理が行き届いている霊園が多い傾向にあるため、手入れの心配が少なく安心して任せられる点も魅力といえるでしょう。施設によっては墓誌に名前を刻めるところもあり、自然葬でありながら従来のお墓と同様に故人を偲べる環境が整えられているのが都市型樹木葬の特徴です。
●里山型
里山型の樹木葬は、山林や丘陵地といった自然に囲まれたエリアで行われる埋葬形式で、環境との調和を重視しています。
広い土地を活用できるため、一区画ごとにシンボルとなる樹木を植樹する方法が基本で、新たに苗木を植えるタイプや、もともとその土地に根付いている木々を墓標として利用するタイプなど、地域の環境に合わせたさまざまな形があります。
「土に還る」という考えを大切にした自然志向の方に向いており、埋葬そのものが里山の保全活動につながる点も特徴です。
一方で、郊外に位置することが多い傾向にあるため、市街地からのアクセスがやや難しい場合もあります。
四季の移ろいがそのまま景観に反映されるため、自然の変化を感じながら故人を偲べる点が、里山型樹木葬の大きな魅力といえるでしょう。
●公園型
公園型の樹木葬は、霊園や寺院の敷地内に専用エリアを設け、芝生や花木を用いて公園のような開放的な空間を整えたスタイルです。
自然の景観を活かしつつ整備されたエリアで埋葬できるため、従来のお墓よりも柔らかな雰囲気の中で故人を偲べます。
墓域には数本の樹木をシンボルとして植える方式がよく見られますが、施設によっては区画ごとに一本ずつ樹木を配置するタイプもあり、選ぶ霊園によって雰囲気や構成が異なります。敷地が広いため景観が美しく、庭園風の樹木葬と比較すると費用が抑えられる傾向にあります。
ただし、一定の広さが必要となることから、都市中心部よりも郊外に設置されることも少なくありません。自然の温かみと整備された環境のバランスを重視したい方に適した樹木葬といえるでしょう。
●庭園型
庭園型の樹木葬は、霊園や寺院の限られたスペースを活用し、ガーデンのように整えた区画に遺骨を納めるタイプです。シンボルとなる樹木や草花が計画的に配置されており、花壇のように手入れされた美しさが特徴です。
公園型よりもコンパクトな設計で、都市部の霊園で採用されることが多い傾向にあるため、アクセスのよさを重視したい方にも向いています。整然とした庭園を思わせる空間で故人を偲べ、自然葬でありながら景観の美しさをしっかり楽しめる点が魅力です。
一方、限られた土地を使って整備されていることから、郊外の広い敷地で行われる樹木葬に比べると費用が高めになる傾向があります。管理が行き届いた都会型の樹木葬を希望する方に適したスタイルといえるでしょう。
3つの埋葬方法について
樹木葬には、いくつかの埋葬方法があります。後悔のない方法を選択できるよう、それぞれを理解しておきましょう。
●個別型
個別型は、ひとり一人に専用の区画が割り当てられる埋葬方法で、樹木葬の中でも”個人の場所”を明確にできます。区画にはシンボルとなる樹木が配置され、その足元へ遺骨を納めます。
埋葬には、自然回帰を重視し、土に還りやすい骨袋や自然素材の骨壺が使われることも少なくありません。
お参りの際には、決められた区画へ直接手を合わせられるため、従来のお墓と近い感覚で故人を偲べる空間です。
個別型は里山型の樹木葬で採用されることが多い傾向にあり、単身だけでなく夫婦や家族で利用できるタイプもあります。
ただし、契約する霊園によっては一定期間の個別埋葬の後、合祀墓へ移され永代供養に切り替わる場合もあるため、利用条件の理解が重要です。
●集合型
集合型の樹木葬は、一本のシンボルツリーを中心に、複数の遺骨を同じエリアへ納める埋葬方法です。
個別型のように一人ずつ明確な区画を設けず、骨袋や自然素材の骨壺に遺骨を収めて埋葬します。家族や夫婦、親しい人同士で同じ樹木のもとに埋葬されたいと考える方にも利用されています。
霊園によっては、遺骨同士が混ざらないよう仕切りを設けたり、袋に入れたまま埋葬するなどの工夫をしている場合もあります。
●合祀型(ごうしがた)
合祀型は、複数の遺骨を一ヶ所に合わせて埋葬する方式で、合葬墓や供養塔に近い形の樹木葬です。個別の容器を使用せず、骨袋から遺骨を取り出して土中へ直接納め、時間の経過とともにほかの方の遺骨と自然に混ざり合っていきます。
樹木は共有のシンボルツリーとなり、すべての方が同じ樹の下で供養される点が特徴です。個別管理を必要としないため費用を抑えた埋葬方法です。
ただし、合祀後に特定の遺骨だけを取り出すことはできないため、永代供養として納める覚悟が必要です。
樹木葬のメリットとデメリット
樹木葬は、自然に寄り添った新しい供養方法ですが、選ぶ際には特徴や注意点を理解しておくことが重要です。
ここでは、樹木葬のメリットとデメリットを整理し、検討時の判断材料としてわかりやすく解説します。
●樹木葬のメリット
樹木葬には、現代のライフスタイルや価値観に合ったメリットがあります。
まず、基本的に永代供養として扱われるため、墓地の継承者がいない方や、家族に負担を残したくないと考える方に適しています。管理は霊園や寺院が担うため、将来的な墓守りの心配が軽減される点も安心材料です。
また、墓石を建立する一般墓に比べ費用が抑えられやすく、維持費も手頃なケースが多いのが特徴です。さらに、宗旨や宗派に左右されない霊園が多い傾向にあり、宗教にとらわれない供養を希望する方にも利用されています。
土に還ることを重視した自然志向の埋葬方法であるため、「最期は自然の中で眠りたい」という故人の思いを実現できることも、樹木葬ならではの大きな魅力といえるでしょう。
●樹木葬のデメリット
樹木葬には、事前に知っておきたい注意点も存在します。
まず、霊園によって契約期間が定められている場合があり、一定年数を過ぎると合祀に切り替わるケースもあります。特定の区画に長く眠ってほしいと考える方は、契約内容の確認が欠かせません。
また、遺骨を土に還す方式や集合型や合祀型を選ぶと、時間の経過とともに遺骨が混ざり合うため、後から取り出すことが難しくなる点もデメリットです。
さらに、自然豊かな場所に設けられた里山型ではアクセスが不便なこともあり、頻繁なお参りが難しく感じる場合があります。
従来のお墓のように明確な個人墓碑がないため、故人に対するお参りの実感が得にくいと感じる人もいるでしょう。粉骨を条件とする霊園もあるため、埋葬方法の希望に合うか事前確認が重要です。
樹木葬の位牌について
樹木葬を選ぶ際、「位牌はどうなるのか?」と疑問に思う方は少なくありません。供養の在り方が変わる樹木葬では、位牌の扱いも従来のお墓とは異なる点があります。
●位牌とは
位牌とは、故人の戒名(法名・法号)や俗名、没年月日、享年などを記した木製の札で、読経によって故人の魂をお迎えするとされる大切な供養具です。
葬儀で使用する白木の位牌は仮のもので、四十九日法要までに漆塗りの本位牌を用意し、法要の際に”魂入れ”を行い仏壇へ安置するのが一般的な流れです。
自宅に仏壇がない場合は、お寺の位牌壇に預ける寺位牌として管理してもらう方法もあります。
また、宗派によっては位牌を必ずしも作らないところもあるため、事前に寺院へ確認しておくと安心です。
●樹木葬で位牌は必要?
樹木葬では必ずしも位牌を用意しなければならないわけではありませんが、戒名を授かった場合や、故人を日常的に偲ぶ場がほしい方にとっては、位牌を作ることで心の支えになることがあります。
戒名がない場合でも、俗名で位牌を作成することはできるため、自然葬の位牌が不要と決めつけず、家族がどのような形で供養したいかを踏まえて判断するとよいでしょう。
樹木葬の骨壺について
自然へ還ることを重視する樹木葬では、遺骨を骨壺から出して直接土に埋める方法がとられることも少なくありません。里山型の樹木葬では、遺骨をそのまま散骨し、自然にゆっくりと戻っていく形がみられます。
一方、公園型では、時間の経過とともに土に還る素材の容器へ移し替えて埋葬するケースもあり、さらし布で包んだり、釉薬を使わない素焼きの器を使用したりと、霊園ごとにさまざまな工夫が施されています。遺族が手作りの袋を用意することもあります。
なお、後から遺骨を取り出す可能性がある場合は、事情によっては骨壺に入れたまま埋葬することもできるケースもあるため、希望する埋葬方法に合わせて、事前に霊園へ確認しておくと安心です。
樹木葬の注意点
樹木葬は自然に寄り添う埋葬方法ですが、選ぶ際はいくつかの点を事前に理解しておく必要があります。
まず、散骨とは異なり墓埋法の対象となるため、埋葬は自治体の許可を受けた墓地でのみ行えます。年間管理費が必要な霊園もあり、費用の仕組みは場所によって異なるため、契約前に確認することが欠かせません。
また、自然環境を活かした埋葬ゆえに、樹木の成長や管理状況によって景観が変わる可能性があります。さらに、個別埋葬でない形式では遺族の理解を得にくい場合もあるため、家族間で十分に話し合い、納得したうえで選択することが大切です。
樹木葬のまとめ
ここまで樹木葬についてお伝えしてきました。樹木葬の要点をまとめると以下のとおりです。
- •樹木葬とは、墓石を建立する代わりに、樹木や草花を墓標として遺骨を埋葬する新しい供養形式
- •樹木葬は、都市型や里山型、公園型、庭園型などの種類があり、それぞれの特徴を理解したうえで選択することが大切
- •樹木葬には、個別型や集合型、合祀型(ごうしがた)などの埋葬方法がある
樹木葬は、従来の墓石にとらわれない自由な供養の形です。ライフスタイルや価値観に合わせて選ぶことで、より納得のいく終の住処を見つけられるはずです。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

